誰しも行きつけのお店は、いくつかありますね。
ラーメン屋さん、町中華屋さん、寿司割烹などなど、若い頃はコスパで選んでいましたが、それなりに年を重ねると何故かチェーン店からは足が遠のきましたね。
そんな、足繫く通うお店とは別に、「あそこのハンバーグは美味しい、あそこのカレーは本格的だ」というおいしさ抜群のお店があります。
「めちゃくちゃ美味しい」。
「美味しいのは分かっているし、記憶もしている」。でも、なかなか行きつけのお店、とまではならない。
でも、それは私だけが足繁く通っていないだけで、きっと他の誰かが常連として行ってらっしゃることでしょう。
そういう誰かがいるから、そのお店も続いているわけですし。
そして、その誰かにとってそのお店にはきっと「おいしい以外の何かが存在している」と思うのです。

心地よいと思えるもの

コピーライターとして、実はこのテーマを数週間考えて、言語化しようと修行僧のように格闘しておりました。
正直言って、なかなか抽象的過ぎていまだ明確にはできていないのですが、「ひとの心理」を考え、「ほかにこのような心境になるときを想像し」、いったいどういう事なのか、なぜそうなるのか、を問い続けてきました。
例えば、「自分のもの」という感覚だろうか。
それとも、「自分の中の一部分が、そのお店になっていくような感覚」なのだろうか。
今の所、最適解として「心地よい」と思えることではないだろうか、と思いました。
これはこれで、フワッとしているので、さらに苦悩するのですが、「心地よい」を掘り下げてみることにしました。
「心地よい」とは、どういう事か。
そのお店で過ごす、時間が心地よいと、なぜ感じてしまうのか。
「心地よい」とは、こころが落ち着いています。不安や緊張が芽生える要素がほとんどありません。
安心である事。そして、当然私以外のお客さんも居られますので、きっとそこには、「くつろげる為の、柔らかい秩序」が
あると思います。
そして、「心地よい」と同時に「ちょうどいい感じ」という感覚もあると思います。
「それくらいでいい」とか「ほどほどの感じ」では、少し温もりが足りません。
お店の人も、お客さんもあまり無理をしていない感じ。
品のある落ち着いた感じ。
素直で正直で、お店にもよりますが、どこか華奢な感じ。
なんとなくですが、「おいしい以外に、そこに在るもの」が浮き上がってきた感じがします。
「心地よい」、「ちょうどいい」は意図的につくれるのか

そう思ってもらえることを、意図的につくれるのだろうか。
そう思ってもらえるような、表現物を考えればよいのだろうか。
お店側が「これはこれくらいでいいのでは?」とか「だいたいこんな感じかな」と演出を工夫し「心地よい」、「ちょうどいい」を目指したとします。
それ自体は、多かれ少なかれどのお店でもやっている事とと思いますが、お客さんがそう思っているかどうかは分かりません。
アンケートやヒアリングから見えてくるものもあると思いますが、あくまで参考程度だと考えます。
そして、お客さんがそう思う事は、お客さんの数だけあるので、非常につかみどころのない、意図して作れるものでもない気がします。
それでも、長期的な視点で、その領域を目指す事こそ、「美味しいし、何となくいいお店」になるのではないでしょうか。
先ほど、「心地よい」とは、どこか華奢な感じと書きました。
線が細くて、ちょっと手を差し伸べたくなるような。
少し、意地悪な言い方をすれば、存在が薄い感じ。
つまり「心地よい」の中には「少しづつ忘れていく要素」も在りそうだと考えました。
おいおい!忘れていってはイカンじゃないか!と思えますが、完全に忘れることは無いと思います。なぜか?
そのストッパー役は、美味しい料理の記憶だからだと思います。
だからこそ、通い続けるお店となるのではないでしょうか。
そして、お店を出た後に、その少し忘れていた箇所が、心地よく元に戻る、という感覚ではないでしょうか。
肩の力を抜いた、ショートストーリーで表現してみる
概念は言葉で作られる。
今回、このフワッとしたテーマはまさに、その苦悩的な思考作業でした。
そしてなにも、料理を提供するお店だけでなく、旅館やブライダル式場や、ひょっとしたら葬儀に関する施設にも
共通するテーマかもしれません。
物語は、無理やり作ろうとするものではありません。
そうすると、かなり嘘っぽく仕上がり、けっしてひとのここを心地よくはしないと考えます。
ではどう作るのか。
それは、対象にすでに在るもの、対象がすでに有する物、そのなかにこそ、物語れる要素があります。
ボディコピーやステートメントからでもいいので、このあたりを言語化することを強くお勧めします。
きっとそれは、手間がかかることと思います。
手間とは、「手」をかけた時「間」と書きます。
ひとが、手をかけた時間は、やがて、意図せずとも、その人唯一のブランドとなっていくと思います。
ステートメントを作る。そして、ボディコピーを考える。それから、どう伝えるかを考える。
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