【本当に伝えるべき事を掴むため】合意形成の大切さ

クライアント様との打ち合わせで大切であり、なかなかスムーズに行きそうで行かないのが「合意形成」ですね。
特に経験上、佐賀の中小企業の社長さまは、とにかく忙しい!
一旦、合意したかに見えて、数日後に訪問すると違う方向へと社長だけが走って行っていた・・。

迷走と困惑期間が、しばらく続き、ようやく合意形成らしい形になっていくのです。
でも、ここは冷静にしっかりと傾聴する姿勢がコピーライターやディレクションに関わる方は必要ですね。

合意形成のことを「社長の頭の整理」とか「たな卸し」とか簡単に言われるクリエーターの方もいらっしゃるようですが、それはちょっと特権的な構えだと思います。

ほんとに自戒を込めて言いますが、そのような「私は特別」的な構えは自身へと跳ね返ってきます。
どうは跳ね返ってくるかと言えば「思考の幅が狭くなり」、「それ以外の選択肢を見る努力もしなくなり」、引いては自分に甘くなります。
そのような状態だと、いい仕事ぶりができないだけでなく、やがてお仕事の依頼が減ってきます。当たり前と言えば当たり前ですが、もっと臆病であるべきだと思います。

では、どうやって合意へと進めていくのか

まず、ご依頼の案件が「商品を売る為」なのか、それとも「商品よりも言っておくべきことを表現する為」なのか、を考えます。以前は、ボディコピー的な感じで、とりあえず書いていました。「商品名」を書いて、その周辺に関連する言葉を並べたり、その言葉自体が社会的にどのあたりに位置していそうか、などですね。

その作業フェーズでは、なるべく決めつけずに様々な角度から考えていきます。そしてその様々な角度のなかの優先順位は「その表現物を見る生活者は誰だろうか」を一番に考えていきます。

コピーは、その言葉が在るだけで、なんらかの変化や期待を生む価値を持たないと、コピーとは言えません。
つまり、課題を解決することに紐づいているのか、という事です。

ですので、とりあえずは、書きまくります。そうして、一旦作業を止めます。なぜ止めるかと言えば「その文章や言葉は、説明を要するほど、理解しにくくなっている」事が多いからです。一旦、クールダウンですね。

それを経て、再度向き合うのですが、その時は「そこにクライアントの大事な事が感じられるのか」、「その文章や言葉はクライアントの声となっているか」など自分で書いたものに「ケチ」を付けていきます。
それらを繰り返していくと、商品のコピーよりもまずは、クライアントの意思を言語化したほうが良い、などの見えていなかったた方針が見えてきます。つまりその文章の主語は「商品」ではじめるのか「クライアント」ではじめるのか、のスタートが切れるという事です。
いわゆる「商品ステートメント」なのか「事業ステートメント」なのか「企業ステートメント」なのかが明文化された状態という事です。
それらを何パターンかクライアントに提示して、ようやく合意形成となります。


苦悩の中にこそ、コピーとなる分子が含まれている

目には映らないけど、その分子には、どれほどのポテンシャルが潜んでいるだろうか。

これは、実際に依頼があった時のお話ですが。「島内さん、海鮮シュウマイの売れ行きが良くないのでどうにかならないかな?」と以前よりお付き合いのあるクライアント様から連絡がありました。
早速、売り場に行き、商品の置かれている状況を把握します。そして、購入し食べてみます。
パッケージデザインもですが、きわめて普通のお味。すべてが普通なのです。

「これは、今までどんな理由で買われていたのだろうか」と考えました。クライアント様からのヒアリング、そして許可を頂いて店舗の方からもお話を伺いました。
商品自体は、約20年前に発売され当時はその話題性もあり、手土産や贈り物に買われていたようです。
どのような話題性があったのかというと、当時有明海には生息しない「ナルトビエイ」が群れを成し、タイラギなどの地元の貝類を危機的状況になるまで食い尽くしていたのです。冷静に考えれば水温上昇でただただエサを求めて北上したナルトビエイ。
「飯を食っていただけ」で駆除されるという理不尽極まりないことだと同情しながらも、生まれ変わってもナルトビエイにだけはならないように、生きているうちに功徳を積まなくてはならないと思いました。

商品化には、エイ特有のアンモニア臭を消すのに大変苦労されたようです。それに、エイ自体がイカやエビと違いほとんど食べる習慣がないこと。つまり食べるとどうなる、というイメージがまったく定着していないのです。
それでも、ニュースに取り上げられたり、地元の飲食店の協力もあり、一時の話題を形成したようです。
しかし、時は流れネーミングも「海鮮シュウマイ」のまま。
「海鮮シュウマイ」を掘り下げることよりも、「今の時代の手土産はこうあってもいいんじゃないかな」と、少し視座を高めて思考を進めていきました。

企業ステートメントとして表現する

以下、原文を記載します。

美味しいだけが、手土産ではないという時代。

発売から約20年。ナルトビエイの被害を逆転の発想で、その肉を加工した食品を作る。
当時は、そんな考え自体が珍しい時代でした。
でも、ナルトビエイにとっても生きる為には食べなくてはいけません。

商品化に向けては、技術的にも倫理的にも難航致しました。
それでも、私たち株式会社 オフィス・タカハシは、見た目の派手さはないけれど、最初から人と自然の調和を真ん中に置いた商品を目指しました。

手土産は、もっと自由であっていいと思います。


これを書いたときに、まずは「今のままの商品」の中で埋もれていて、表現できていない箇所を見つける事。
そして、それを見た人が「そう言えばそうだよな」と思って頂けることを商品棚をイメージしながら見つけ出す事。
この2点がポイントとなりました。

見えにくい分子を見つけた瞬間でした。

売れ行きが思わしくない商品でお悩みの企業様。お気軽にご相談ください。