【商品名について】ネーミングは物語からしか生まれない。

【広く知られているものを見る】

森永ミルクキャラメル。
後に、フレーバー違いのキャラメルが多数出てきましたが、やはり揺るぎない位置に鎮座致しますね。
いわゆる、〇〇と言えば、〇〇だよね。という図式が成立している状態です。
この誰もが知っている、という「商品」や「コト」からどのようなヒントが得られるでしょうか。
例えば、地名が考えられますね。
京都、鎌倉、北海道、離島、そして東京、大阪。
それぞれの地域の「色」「匂い」「音」「音楽」までもが、脳内に出現してきます。
また、時間と言う普遍的な要素にも、広く共通したイメージがありますね。
朝獲れ野菜、午後の紅茶、三丁目の夕日。
どれも、その時間帯に自分が投影されているような設計がされていますね。

つまり、「どう美味しいのか」だけを訴求していても、モノが飽和状態では、響かないということですね。
森永キャラメルの場合は、物質的なものが不足していた時代です。
とてもユニークで新規性があり、何らかの課題を解決できそうな商品であれば、ストレートなネーミングでも良いでしょう。
例えば、透明な醤油。どこのメーカーか忘れましたが、なぜ透明にする必要があったのか?
つまり、醤油のあの色を透明にすることで、なにが解決できたのか?
それは、あの色だと、料理の色が制限されるということ。
つまり、創作料理などで醤油を使いたいが、色が・・・、を解決したということですね。




【商品名のための物語つくり】

実績コーナーでも紹介しましたが、廃棄海苔を使用した抹茶カステラの商品名づくりを改めて紹介します。
まず、味は普通でした。この時点で、物語をつくる必要を感じました。
つまり、こんなに美味しいよとは言わない方向性で、訴求できるエッセンスを探していくわけです。
そして母体であるサンノリ様からの約束事が「サンノーリ」という文言をパッケージのどこかに入れて欲しい、ということでした。
結論から言うと、「サンノーリ」という響きはイタリアを想像させます。
イタリアのシチリア半島の伝統のお菓子「カンノーリ」からヒントを得た、というのが根拠のようでしたが、正直難題でした。
まず、佐賀と有明海とイタリアがなかなか結び付かない。
歴史的にもなにかあったわけでもない。
仮に「サンノーリのカステラ」と商品名を決めても、それが生活者になんのメリットがあるのか?
どういう関係性を設計すればいいのか?そのネーミングからは何も伝わりません。
そこで、今一度「廃棄海苔」を中心に考え、そもそもこの商品の肝要なことは、厳冬の有明海で漁をし、撮れた海苔を余すことなく使い切ってもらいたいという漁師の願いなはず。
まずは、その本質が希釈されるような商品名は良くない、と考えました。
さらに、海苔の加工品は多数あり、それらとの違いを、「おいしい」以外で語ることを目指しました。
「応援消費」とか「応援経済」という言葉の概念が、少しずつ世に広まってきていましたので、その辺りをボディコピーとしてまず作成し、全体の物語の骨子をまとめ上げていきました。

おいしから買って、ではなく有限の資産である有明海の海苔を持続可能な発展をしていくために買って、という内容にまとめていきました。
ただ、最後まで見えてこなかったものが「商品名」でした。

【手元を離れても良い商品名】

サンノーリを、パッケージデザインのどこかに入れてくれ、という条件。
そして、名前は小学生でも読めるもの、分かりやすくあり、それでいて読後感、余韻、なんだろう?と不思議がる事をテーマに考えました。

まず、サンノーリは、その他にない響きと言葉のスマートさから「擬人化」を試みました。
つまり、サンノーリとは廃棄されるかもしれない海苔自身と設定しました。
もう少し詳しく言うと、自分が生まれた海の状態が気になってしかたがない、という事を内包させています。
実際は、その辺りをボディコピーに書こうかと思いましたが、ちょっとおせっかいすぎるかと思い、購入者それぞれの想像に任せることにしました。

そして、そのサンノーリが、一番言いたいことをパッケージの両側面に書き記しました。
それらの原稿を見ていると、どうしても、サンノーリの願い、とかサンノーリの祈りとか、ちょっと重い感じになってしまいます。
重くもなく、シリアス過ぎても良くない。
それでいて、正直さや真摯さが感じられる言葉とは。
何も悪い事をしたわけではないので「懺悔」という言葉はありえません。
そこで、告白と記しました。
「好きです、付き合ってください」などの告白です。
純粋さや混じりけの無さも感じさせる「サンノーリの告白」という商品名でOKを頂きました。

【物語つくりには、軸をもつこと】

街路樹もだいぶ冬模様になってきました。
紅葉の季節ですね。
こういう時にこそ、ひとがあまりに見ない「紅葉の裏側ってどうなってんの?」の視点が欲しいところです。
なぜか?
物語をつくるには、その背景は当然知らなければなりません。
でもそれだけだと、まだ浅い、のです。
見た目だけを、鵜呑みにしないことです。
そういう思考の基準が、軸を持つ事。
つまり、この商品にしかいえないことを、きっちり固定する事。
その固定された軸を意識しながら、紅葉の葉っぱの裏を見てみると、画像では分かりづらいですが、「やっぱこいつも生きとる」という生命力が見て取れました。
この、生命力を感じた、という事実を認識して商品名、またはキャッチコピーを作ります。
もし、この紅葉の時期限定の商品を製造販売される企業さまが居られたならば、ぜひ「生命力」を意識してお考えてみてはいかがでしょうか。
もし、考えてもわからん、というときはご連絡ください。
この商品にしかいえないことを、見つけます。