【効果が見込めるPOPつくり】選んでもらえるように設計する

数年前、DVDレンタル屋さんで見たPOPが今でも記憶にあります。
まあ、言いたいことは、「オススメのDVDです!観てね!」なんですが、「感情移入」させる文章術といいましょうか、
グッとくるものがありました。ざっとですが、記憶の限り原文を記したいと思います。

「秋の夜長、みなさんどうお過ごしですか? わたしは、先ごろ大好きだった祖父を亡くしました。
寡黙だった祖父ですが、わたしが病弱だったこともあり、ちょっとしたけがや病気でも、手当や看病をしてくれました。
いつの間にか、老いていった祖父。そして、いつの間にか、故郷を離れ一人暮らしを始めたわたし。
その空白の時間を埋めてくれるような作品です。」


すいません、後半は記憶が定かではないので、やや島内がテコ入れしておりますが、確か、オススメの映画も離れた場所で過ごす孫に会いに行く祖父の映画だったような・・。すいません、覚えてません。

まあでも、この「手紙」のような「POP」の何が凄いのか記していきます。
まず「祖父が死んだ!」といきなり言うわけです。

普通、「この映画の見どころは~」とか映画の中身を凝縮させて表現しますが、いきなりの「ワタクシ事」が来るわけです。
ですので、恐らくわたしは、「あなたは誰?」という思いに至り、文末のスタッフ名を確認したと思います。
この時の、「どれにしようかな」とキョロキョロしてる時に、この「パーソナルな出来事を記した文章」が歩みを止めたのです。
どの映画を選ぼうか、と映画の事で頭がいっぱい状態の中に、いきなり「他人の出来事」が入ってきたわけです。
そりゃ「なんじゃ?どうした?」と戸惑うわけです。

この意味することは、商品のお買い上げ場では、ほとんどのお客さんは「商品のことしか頭にない」という事。
そして、そのお目当ての商品が視界に入ったら、値段や、他にどんなのがあるかな、くらいしか確認しない、という事。
そういう状況で、不意を突かれるような文章は、しかも状況にもよりますが、ややシリアスな内容だったりしたら、余計に「どういう事?」という心理になり、「答えを探す」という無意識の作用が働くこととなります。

答えを探し出したら、感情移入を目指しましょう。

実際にお客さんが「答えを探し出している」かどうかは分かりませんが、少なくとも「足が止まり、見始めた」のならば
おのずと短い文章であれば、読み切ってしまいます。
そして、ここからが「どのような感情になってもらうことで、この商品を選んでもらうか」を考えていくのですが、食品であれば、それを食べた時の満足感や他にないテイストだったり、時短料理なら、空いた時間にこんなことができるね~っと言えるかと思います。
でも、それらを、そのまま言語化し表現しても、ほとんど刺さりません。
つまり商品説明のような「見れば分かるよ」的なことをわざわざ表現するよりも、それを食べている時の感情がどんな感じだったら「いい感じやね~」とか「なんかいいね~」とか「なんかステキね」となり得るか、を考えるのです。

例えば、先日お手伝いをした「薬膳香蓮」さんの「サムゲタン風スープ」では、どう美味しのか、よりも「それを食べる目的」を表現するすることで感情移入を目指しました。
以下、そのための思考の事実を箇条書きにまとめます。

①2人前であること
②焼肉食いてー!とは思う事はあっても、サムゲタン食いてーとは、普段あまりならないこと
③とはいえ、栄養価はなんか凄そう
④そもそも、薬膳家が本気で作った!とも書いてあるので、間違いなさそう
⑤自分では作れそうにないこと
⑥レンチンでOKなところ

これらの事実を並べて、導いた一言は「時間」でした。
つまり、夫婦2人で食事をする、日曜の夕方のシーンを彷彿させる狙いを込めました。
価格帯、パッケージから想起する「やや大人の食べ物」的なデザイン、そして、作り手の確かさ、などがもたらすのは
まだまだ共に頑張ろう、という時間をサムゲタンスープとして提供する、という設計を致しました。

表現するときに目指すもの

いろんな考え方や、伝え方があると思います。
あっていいと思いますが、注意点として「商品説明にしか見えない」伝えかたは、心理変容を期待できない可能性が非常に高いです。
かといって、「飾る。わたし。」のようなアパレルにありそうな文言を、食品に持ってきても「ポッカーン」となります。
それと、できればあれもこれもと「足さないこと」
なぜなら「品」から遠ざかっていきます。
引いて、削って、この一言。
その言葉から、想起してもらう、よそにない感情を目指すべきと考えます。
当日、それを買わなかったとしても、記憶に残るような一言が望ましいと思います。

せっかくの商品をお客様にお届けるときの、名刺のようなPOP。
お困りの時は、どうぞ気軽にご連絡ください。