【ネーミングについて】価値が伝わるネーミング

名前には、商品名、企業名、子供の名前などあります。
子供の名前は、こう育って欲しい、という願いが込められますが、商品名や企業名などは
「意図するものの価値」が込められます。
とくに商品の名前には、商業的なフィールドで競争力のある強い目的が必要となってきます。

また、企業のビジョンやパーパスのように未来を語るには、過去と地続きになっていないと、他人事のように聴こえて、ひとの記憶にさえ残りません。記憶されないから、絵に描いた餅になるのです。
市内を走るバスのボディの広告なんかそうですね。

価値が伝わるネーミング
可能性や期待、そして未来の事を語っているのに、なぜか強い意志を感じる。
そういうネーミングは、そのクライアントが伝えたい価値とそれを見る人の価値が一致した時に生じます。
もっといえば、強いブランドとして立脚するには、その価値がインプットされ、生活者の普段の暮らしの中にインストールされ、繰り返し再現されていく状態だと言えます。
ここを最初から目指して考えるのと、どこかで見たことのあるネーミングに収まるような思考とでは、耐久性に限って言えば、雲泥の差が出てきます。


価値を感じる言葉。それはコピーライターが書く言葉。

つまり、価値を感じない言葉の羅列は、それはコピーとは言えないとなります。
コピーになっている言葉とは。
小学生でも分かる普通の言葉で、普通以上の言葉を生み出す。
そして、その言葉で、意識していなかった事、そういえば確かにそうだと思う事、遠い記憶を
思い出すような事、何か未来に期待を感じるような事。
そういう言葉として設計をしていきます。

だから「刺さる言葉」とか言われるのですが、一般的にはインパクトがある言葉、という依頼の仕方が
多いのですが、どのようなインパクトであるべきで、その求められる心理変容を想像し、言葉のテンポ、リズム、そしてクライアントの声が聞こえてきそうな感じ。
何に重きを置くべきか、などを頭をグルングルンしながら、数日かけて考えていきます。

依頼案件によっては、商品名をきかっけとして、そもそもの「在り方」を逆に提示する場合もあります。
今では、AIがそこそこの内容を数十秒も要せず、その蓄えられた知識量から生成してくれます。
在庫の知識ですから、どうしても「わずかに見える、クライアントさえも想像できていなかった言葉」までは
ストックの知識からは出てきません。
優秀なアシスタントは、コンサートマスターではあっても、演奏の前、そしてその余韻までは設計できないと
思います。

クライアントの言いたい事を見つける。そして、クライアントがずっと言いたかったことも見つける。
クライアントの言葉として、その先の生活者に届くように設えていきます。

間をうまくつかう

先ほど、バスの車体広告を意味はあっても意義がなされていない、と申しました。
ファッション性が強すぎるので、あれもこれもと賑やか過ぎるのですが、啓蒙的に言う割には
実際の行動には至らないし、なんら心にひっかかる言葉があるわけでもありません。
表現としての責任は、最初から設定していないからだと思います。
未来はこうあったらいいよね、という言い方は、誰も責任を取らない、と言ってるようなものです。
だから、響かない。他責でよい、という考えです。

仮に、商品名がそうであった場合どうなるでしょう。
その商品が、食品であった場合、いったいこの商品を買う事で、どういう便益があるのか
さっぱり分からないと思います。
おいしさの訴求は、どの食品でも最低限の事は表現しますし、あまり効果があるとはいえません。
お金をかけて、時間をかけてデザイナーに依頼しても、生活者には波風程度の響きさえも与えない
表現はやめるべきだと思います。
でも現実多くのデザインがこの域で、少しでも安くできるところに仕事の発注が流れているように思えます。

言いたいことが明確になってきたら、それを見る生活者の心理を考えましょう。
生活者は、初めて見る商品から、あれもこれもと知りたがるでしょうか?
これだけモノが溢れかえっている状況で、貪欲な好奇心があるのでしょうか?

逆に言えば、生活者が、あれもこれも知りたい価値とはなんでしょうか?

当然、世代ごと、年代ごとで知りたい価値は異なってくるのでしょうが、倫理的限界を超えたような
コスパや競争があまりにも多いので、世代、年代で区切ることをせず、世の中の課題として、大きく強く
表現していく時代だと思います。
大人こそ、責任ある消費を。
次世代が抱えるかもしれない課題を、今の大人が我がことととらえること。
つまり、生活者のニーズやウォンツを汲んだ表現ではなく、なんらかの示唆を帯びた表現が適していると思います。

ともに考えていきませんか。
その答えの分子は、すでにクライアントはお持ちです。
言語化していく、視覚化していく。そのためにコピーライターは存在しています。