【リフォーム業界の方へ】御社のブランド力に寄与するストーリーテリング術。

食卓は野球場

お父さんは、ハイボール。
お母さんは、缶ビール。
テレビには、大谷選手が映っている。試合前のウォーミングアップみたいで、選手同士がゆっくり大きな動作でキャッチボールをしている。
外野の選手が、遠くから投げても、まるでグローブに吸い付くように、ボールは収まっていく。
試合が始まっていないせいか、両親はいろんな話をしている。しているのだが、すこし様子がおかしい。

プシュッと缶を開けて、「今日も頭にきた!」といきなりの愚痴モードの母。
「あーハイボールうまっ!」と帰宅するなり10秒で缶を開けた父。
「あいつムカつく。どうしても理解できない!」とさらに愚痴街道まっしぐらの母。
「どこの世界にも、そんなのいるよ。喋って発散したらいいさ」と相手をしてやるような口ぶりの父。
「しかし、なかなか試合始まんないな」とまったく、母の会話に寄り添ってなさそうな父。

茹で過ぎた落花生を、ゆるりと剝いて、わたしもテレビを眺めていたけど、プロの選手のキャッチボールには、やっぱり見とれてしまう。
3歳下の弟が少年野球に通っていることもあって、時々キャッチボールの相手をしたことがある。
見るのとやるのとではこんなに違うものか、とまずゴツゴツしたグローブに馴染めなかった。
そして、弟からくるボールも、ちっとも可愛くなかった。それに、ちょっと臭かった。
ピッチャーや外野を守ることが多いので、わたしの顔近くに来たときのボールには、まるでつよい意志が込められているような、強さがあった。

「いくら私が我慢強いからって、限度ってもんがあるわけよ!」と一応は父と食卓を挟んで対峙してるが、母の視線はテレビ。
試合が始まらない父は「この落花生茹で過ぎたけど、味があるね~」と2本目のハイボールをプシュッと。
「あ!明日、野球の練習中止だった」と風呂上がりの弟。
「来年は、この職場やめよっ!ね?お父さん?いい?」と愚痴の発生原因の父へするどい視線を投げる。
「来年?ああ、来年ね。んん、来年は俺も50歳か。どうりで、酒の抜け具合が悪くなったはずだ」と風呂上がりの弟に落花生を放り投げる。
ワンハンドでキャッチした弟に、母が「さすが!ナイスキャッチ!」と愚痴の時間の終わりを告げた。

我が家の食卓の周りでは、落ちた会話のボールがあちこちにある。
誰も会話のボールを受け取らず、投げっぱなしなので、たくさん落ちてる。落ちていても、いつの間にか消えていて、そしてまた明日、新しく落ちているはずだ。
見たまんま、思ったことをそのまま。
たぶんのこの会話ができる空間は、世界でひとつしかない、安心できる野球場なんだな、と思った。

日常の生活にこそ、もっと思いやりを

ただただ過ごしているようで、フィクションであっても、「そういう食卓っていいね」と思ってもらえるような物語。
リフォーム後のプロダクトだけを切取って見せるのではなく、物語を挟んで、普段着から、余所行きの服に着替えるような、思いやりの余裕を持ってもらう事が、狙いの文章です。

ドラマや映画では、ちょっと非現実的過ぎる、おしゃれでクールな食卓での食事シーンが流れるときがあります。
しかも、セリフが長い。
脚本がそうなのだろうけど、実際は、そんなに長い会話はない。それこそ、台本があるなら別ですが。
「行ってきまーす」
「おお」
「ただいまー」
「おお」
「いただきまーす」
「おお」
「ごちそーさま」
「ああ」
これは、思春期の娘とわたしとの1日の会話だったような記憶があります。
これでは、物語にはならないので、あーでもない、こーでもない、とうるさいくらいの会話があり、ドラマや映画はある目的へと進行するのです。
フィクションであっても、ちょっとコモディティな匂いがするのは私だけだろうか、とも思うのです。

大げさでもないし、ありそうだし、でもなんだかしばらくは記憶に残りそうなショートストーリー

サラリーマンから個人事業主となり、すっかり飛行機に乗る機会が減りました。
出張が多かった時の、飛行機では、わたしは結構機内誌を読んでました。
行ったこともない場所の物語が、とても魅力的に書かれているのを記憶しています。

どこか遠くの人々の生活が、それこそ、穏やかに書かれている文章には、何が書かれていたかは忘れましたが、書かれていた文章の塊のような記憶の残像のようなものは、残っています。
そして、その機内誌の役割は、その遠くへ行く手段として、飛行機が最適だよ、というものですね。
しかし、ネタが豊富な飛行機業界、またはトラベル業界と比べて、リフォームって語るネタがあまりないのでは?と思われているのかもしれません。
実際、リフォーム業界の紙媒体のツールをみても、いわゆるカタログに近い性質が多いと思います。
そこを、どうにかするのがコピーライターの仕事ですね。
日常を物語にするには、視点を変えて見ることが求められます。
さらに、その価値を変換し、あらためて「いいよね」って思ってもらえるような。

そんな物語を、リフォームの企画に入れてみませんか。
手ざわり感が伝わる物語を、コピーライター島内が考えます。
ご依頼お待ち申しております!