AIでは語れない人間味 |「温度」と「物語」が生む世界観の力

クリエイティブ領域以外でも、様々な業界においてAIの台頭が加速しています。
それでも、AIには再現できない「人間らしさ」や「温度感」をどうデザイン設計に取り入れ、生活者にとって必要と思われるような価値へと変換させるか。
本記事では、実体験に基づいた物語性のある感性価値の提案について、shimauchi-design.comの視点から掘り下げます。

「温度」と「物語」|それが、なぜ今必要なのか?

優秀な秘書であるAI。
Z世代以降では、もはや当たり前に使用されています。

私の娘は、大学2年生ですが、レポートや試験対策の情報収集で使っているようです。
父であり、コピーライターである私は、主に一次情報の収集や業界ごとの市場動向や過去の情報を知るために使っています。
本来なら、数時間を要する内容を、わずか数秒で提示してくれるAI。これを優秀な秘書と言わずに何というのでしょうか。
便利で、タイパです。アジェンダやセミナーの構成なんぞ、サラリと組んでくれます。考えずに済みますから、伝えたい事のみを熟考できて助かります。

しかしながら、この誰もがAIを使える時代において、入手した情報だけで設計したコンテンツに、果たして経済的価値を生む力が在るのでしょうか。情報のコモディティとでも言いましょうか、AIのみの表現だと、主観的思考の欠如状態を生み続けると思います。
そして、最も気を付けなければならないのは、クリエイティブな分野において、人間味が感じられない生成物が増えていくと考えます。

人間味とは何か?

人間には、体温があります。会話もしますし、それを記憶もします。
その記憶は、正確な記録を得意とするAIと違い、やや自分にとって都合の良い解釈へと装飾し、場合によっては、優しい不確実性を孕んでいます。それらの要素が在るが故に、ひとにはそれぞれの物語が在ります。

その物語の積層が結晶化すると、そのひとの感性へと育まれていきます。
共感を覚えるのは、その感性と感性のお見合いが、うまくマッチングした時に発生します。
そのお見合いシーンを構想し、創造できるのはAIではなく、人間だと思います。

shimauchi-design.comから読み解く|世界観の力

このサイト内で、「リフォーム業界の方へ」と題して、数本のブログを上げています。特に、今回のブログのテーマと親和性が在るものをご紹介いたします。

・「リフォーム業界の方へ」日常の物語からのアプローチ

このブログでは、素敵な空間の提示ばかりが散見される、リフォーム会社の表現の在り方を問うことから始まります。
平たく言えば、非現実すぎるので、もっと日常の出来事の延長線上のような表現が望ましいのでは?と提言をしています。

例えるなら、百貨店のスタイル抜群のマネキンが着る服は、それは素敵に見えますが、自分ごと化までは到達していない、ということです。
そして、ひとの記憶に訴求するような人間味のあるコンテンツを長期的に発信し、感性と感性のお見合いの連続を創ることが、生活者との強い繋がりを築いていきます。
特に、過去に体験した事例を「温度感」が伝わるように綴った物語には、お見合いの成功率が高まります。

・「リフォーム業界の方へ」空間を語るよりも、ブランドの物語を語る

こちらのブログも、リフォーム会社の発信の在り方を問う構成となっています。
なかでも、現実的な時間軸を見据えての提案ブログとなっています。

リフォームは、すぐにはしない人の方が圧倒的に多い。
しかしながら、建築物である以上は、いずれ老朽化が進み改築しなくてはなりません。また、2045年には全国の都道府県で人口減少が始まるという予測も出ています。
今は、リフォームは考えていない人へのアプローチを、自社ブランドの世界観の構築によって、幕の内弁当のように、あれもこれも詰め込むのではなく、むしろ不要なものをそぎ落とすミニマリズムのようなクリティカルな表現で長期的に築くご提案を書き記しています。

この2つのブログから、これからの時代において大切な示唆をまとめるとこうなります。
感性の資本力が、企業間の競争において優位に位置する、ということです。

資本というぐらいですから、多く有するに越したことはありません。
多くを有するには、感性にフォーカスしたクリエイティブ力が求められます。
ポイントは、ひとの感情の発火点を丁寧に探っていくことが肝要です。
その発火点は感情の数だけあります。そして、意味付けや価値の変換ができるカギが埋もれています。

実体験で綴る、感情の発火点|贈り物の感性資本を育む事例

この体験自体は、以前ブログで紹介した記事となりますが、今回のテーマである、AIが語れない「人間味」について、私の過去の体験と、コモディティ化が進む贈り物市場に向けて発信した記事を紹介します。

クライアントとの打合せで、夕立の雨の中、車を走らせていました。
やや急いでいたこと、そしてほぼ初めて走る道のりであったため、視界に入る情報には敏感になっていました。
緩やかな右カーブの先に、対向車線側のバス停付近に赤ちゃんを抱っこしたお母さんが、まるで壁に張り付くようにまっすぐ立たれているのが目に入りました。
走行中ですから、数秒で状況を把握したのですが、そのバス停には屋根がなく、お母さんは、その近くの建物のわずかに伸びた軒下に、せめて赤ちゃんだけでも濡れないように、窮屈そうに立っていたのです。

一瞬車の中の時刻を見て、小さくなっていくミラーのお母さんを再度確認し、Uターンできる場所を探しました。
「大丈夫ですか?」と声をかけ、傘を手渡しました。
覗いたわけではありませんが、赤ちゃんは私の方に背を向け、お母さんとハグする格好で寝ていました。

お母さんはとても驚き、手渡しをした傘を片手で受け取り、何度も何度も、その腕を頭の上まで持ち上げ、感謝の意を表現されました。
去り行く現場の私の中で「世の中捨てたもんじゃないな」とあのお母さんが思ってくれたら、どれだけいいだろうか、と勝手に妄想していました。

これが、1本の傘から始まった、わたしの贈り物の価値の原点となりました。

贈り物は記念日やイベントだけではなく、ましてや高価でなくても、誰かの困りごとや、孤独に気づいたとき。
そこに希望を灯すような贈り物こそ、記憶に残る価値へと昇華されると思います。

このような文章を、自社ブランドやwebサイトへ、ステートメントやストーリーテリングとして展開し、選ばれるお店へと価値の変換を目指されてはいかがでしょうか。

まとめ|実体験は、模倣できない

AIと人が交差する時代。言い換えれば、正解と不真面目さが入り混じったような環境でしょうか。

不真面目さには、まじめに取り組んでいるけど、どうしてもふざけたいという感情の重なりが感じられます。ちょっとだけ既定路線から外れてみる。
ちょっとだけ外の世界を見てみる。そんな、感情の揺らぎのような人間らしさが、人々の記憶に訴求すると思います。

正解を応えてくれるAI。
かたや言葉で寄り添う、感性のコピーライター。


あなただけしか有しない、感性資産を言葉にしてみませんか?
きっと、見えていなかった世界が広がると思います。

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